A LAST POWER 〜第一章〜
第一部 ロンエン社の陰謀 




AM7:15分・・・。私の定刻としている起床時間である。

時を刻むのを忘れたかのように、依然として時計は不愉快な音を鳴らし続けている。
「すこぶる冷え込むな・・・。」
私の今日の第一声と同時に、窓から差し込む光が今日は一段と白く瞬いている事に気づく・・・。
「昨日の夜は雪か・・・。」
私は心の中で小さくそうつぶやき、期待と想像を膨らませながら窓に近づくと、
果たして、そこには一面の白銀世界が広がっていた。
雪というものは、どうやら人の心を高揚させるのに十分な力を持っているのであろうか・・・。
近所の子供達が驚嘆の声をあげながら、外を駆け回っている姿を認める事もできた。

私は無性にコーヒーが飲みたくなり、煙草のライターを探し当てると、お気に入りの銘柄の
煙を楽しみながら、大声で使用人を呼び出した。
「フランク、いつものコーヒーを頼む」
その言葉を待っていたかのように、屋敷の奥の方から、小さくしわがれた声が返ってきた。
「今、持ってまいります。」
「しかし、御主人様・・・もうすぐ、お迎えの車が参ります。御支度を整えて下さいませ。」
時計を見ると、すでに時計の長針は45の数字を示していた。
大分長い間、外の景色に見とれていたのであろう・・・。
私は慌てて煙草を灰皿に押し付けると、再び大声で叫んだ。
「フランク爺、コーヒーは結構だ。それよりも背広を用意してくれないか」
今度は返事が返ってくる代わりに、階段をけたたましく駆け上がる音が聞こえた。
「ただ今、背広をお持ちしました。コーヒーは朝食の時にお出し致します」
私は軽く頷きながら、
「それでは朝食を頂くとしようか・・・。」と、答えた。

朝食を済ませると、程なくして表玄関の方がにわかに騒がしくなり、
車のドアが乱雑に閉まる音が聞こえた。
「あの連中ときたら、まったく・・・。」
フランクは、そう一言つぶやくと、うやうやしく玄関の扉を開け、私に厚手のコートを差し出しながら
「今日は一段と冷え込みがきつくございます。どうかお風邪を引きませぬよう・・・。」

いつものごとく、軽くフランクに会釈をすると、私は元気よく・・・
「それでは行って来る」
と笑顔で答えた。